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今回は実際に起こった事件をテーマに作製された【子宮に沈める】について
深堀(解説)します。ネタバレ注意
子宮に沈めるとは
【大阪2児放置死事件】を基に家庭という密室で起こった悲劇を描いた衝撃作品です。
幼い子供2人と暮らす、シングルマザーの由希子。良き母であろうと、労働、家事、育児に勤しむが、そんな由希子に、やがて直面する困窮、孤立、そして誘惑が付きまとう
母が逃避に陥ることで始まる、子供たちの悲劇や結末は…
映画情報
タイトル | 子宮に沈める |
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監督・脚本 | 緒方貴臣 |
作製年 | 2013年 |
作製国 | 日本 |
キャスト | 伊澤恵美子 土屋希乃 土屋瑛輝 辰巳蒼生 仁科百華 田中稔彦 |
あらすじ
なかなか帰宅しない夫の俊也を待っている娘の幸と母の由希子(伊澤恵美子)が息子の蒼空に「もう少し待とうね」と言い聞かせて待っている。そんな由希子は良き母であろうと家事や育児を1人でこなす毎日であった。
夫の俊也に違う女性の影を感じた由希子は、久しぶりに帰宅した俊也を自分に振り向かせようとするが拒否されて、一方的に別れを告げられてしまう。
その後、俊也とは離婚し新しいアパートで3人の新生活が始まる。若き母であり、学歴や職歴もなく、医療資格受験の勉強をしながら長時間のパートをしながら、シングルマザーとして懸命に頑張る2児を養う、由希子が次第に・・・
大阪2児餓死事件
2010年に大阪市西区のマンションで、母親の育児放棄によって3歳女児と1歳9ヶ月男児が死体で発見された事件です。1人は餓死で、発見されたときは死後1ヶ月ほどが経過していました。風俗店に勤務していた下村早苗容疑者(当時23歳)を死体遺棄容疑で逮捕し、
後に殺人容疑で再逮捕。2013年3月に有期刑では最も重い、懲役30年が確定しています。
映画の感想(ネタバレ注意!)
1番最初に気になったのは印象は【カメラアングル】が印象的でした。
ごく普通の家庭を覗いているような感じがします。客観的な雰囲気もあって見入ってしまいます。しかも、実際に起きた事件を基に作製されているので、余計リアルに感じました。
親になったら観て欲しい映画ですが、おすすめしません・・・
本当に観てて苦しくて辛いの一言です。矛盾しますが、見て欲しい作品です。
監督の緒方貴臣さんは「社会に訴えたい」重大な問題を描いた作品ですが・・・
映画の結末としては【後味が悪い】作品です。
「女性には元々、母性が備わっている」、「子どもを産めば、母性が沸いてきて、自然に子どもの世話をしたくなる」とよく言われます。これは“女性にとって母性は、本能である”、また本能であるがゆえに“女性は常に母性を感じる”ということなのでしょう。「ダメな母親だ…」と、母親が自分で自分を責めたり、夫、家族、友人、近所の人など、周りの人から「母親のくせに」と非難する風潮はこの考え方が根底にあるのかもしれません。現在、この「母性神話」の崩壊が叫ばれています。
2010年、夏。大阪市内のマンション、大量のゴミに埋もれた一室で幼い女児と男児の遺体が見つかりました。マスコミは連日のように、この事件を取り上げ、容疑者であり、遺体で見つかった2児の母でもある下村早苗を非難しました。この事件のニュースを知った時、私はショックを受けると同時に、マスコミや世間の一方的な母親へのバッシングに違和感を感じました。そこには、私の妹が19歳でシングルマザーとして家事、育児をしながら、肉体も精神も疲弊していく姿を見てきたからかもしれません。
この大阪での衝撃的な事件と同様に、世間やマスコミは、似たような事件が起こる度、母親らしからぬ行動をしたとして被告の母親を批判し叩きます。確かに、これらの母親の行動は、身勝手としか考えられないかもしれません。
その一方で、母子世帯は行政からの支援があるものの、二親の家庭に比べ、経済的・精神的に不安定なケースが多く、女手ひとつで仕事しながら育児をする母親たちの陰の苦労は多くの人の知る所ではありません。経済的な面を見ても、母子家庭の約60%が貧困層にあたるそうです。(※1)にもかかわらず、世間からのシングルマザーへの偏見は強く、「貧困に陥るシングルマザーの大半は甘い、堕落している」という見方が多く存在しています。私はこれらの母親たちに対して擁護をするつもりはありません。
ただ思うことは、「特殊な家庭だけに起こる、別世界の出来事」ではない、ということです。
事件を起こした親や加害者を凶弾するだけでは何の問題の解決にはなりません。
これらの問題は社会全体を巻き込んで、考察していくことが重要だと考えています。
私は、この題材の取材を進める中で、これらの事件の背景には、低学歴や貧困による“情報からの阻害”、社会保障の不備の隙間を突く“身近な風俗産業”が関係していると考えました。
本作品では、“母親”と“女”との間で揺らぐ女性(主人公)が、離婚し、ネグレクト(育児放棄)に至る様を、淡々とした日常の積み重ねの中、敢えて弾劾も非難も同情も庇護もない視点で描きました。虐待は、身体的、心理的、性的とネグレクト(育児放棄)に分けられ、その中でも、ネグレクト(育児放棄)は外部から気づかれにくいと言われています。今回、マスメディアでは報道されない育児放棄が行われる母子家庭の内部を、住んでいる家の中以外の描写を排除した映画を制作することで、観た人々が「このような事件が、テレビから流れる他人事ではなく、自分の身近でも起こり得るかもしれない」と考えるきっかけになれば、嬉しく思います。監督・脚本 緒方貴臣
引用:子宮を沈める公式サイト イントロダクションより
引用元はこちら
賛否ある中で、私個人の意見になってしまいますが・・・
そうした中で、現実問題として受け入れてご自身の日常生活でのどうするべきなのか?自問してもらいたい気持ちもあります。誰もが事件・事故を望んでいる訳がありません。起こさないためには何ができるのか?もう1度考えさせてくれる映画だと私は感じました。
まとめ
今回は【子宮に沈める】(邦画)を紹介しました。
- 2013年作品 監督・脚本を緒方貴臣氏
- 実際に起きた【大阪2児餓死事件】を基に作られている
- 母由希子(伊澤恵美子)の生活の変化に注目
- 視聴者を魅了させる「カメラアングル」
- 結末は決してハッピーエンドではないが、1度は観てもらいたい作品
- 改めて考えなおせる作品
最後に
親になったたら1度は観て欲しい作品です。見終わった後も「後味が悪く」気持ちが憤りを感じました。その中でも親から子供への愛情だったり、日々の生活から子供への接し方などを改めて考えさせてくれる作品でした。
最後までご覧いただきありがとうございました。